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愛しては、ならない
第10章 カーネーション
「……ふう」
私は、一年前のそんなやり取りを思い出しながら我が家のキッチンで、オーブンの前に椅子を置き、そこに座って溜め息を吐いた。
剛が西本の家で暮らす事になってから、あっという間に三ヶ月近く過ぎようとしている。
剛は中学に入学し、祐樹は小学校に上がった。
剛の制服姿を見た時には、ときめきを抑える事が出来ず、ハンカチを目元に宛てて頬が熱いのを私は誤魔化したのだ。
彼と出逢ってから一年以上が経つが、彼の姿を見るだけで浮き立つのは変わらない。
家族としてこれから一緒に時を過ごすうちに、この胸が鳴る事もいつか無くなるのだろうか?
自問してみるが、全く分からない。
「自分で自分の心が分からない、なんて、おかしいなぁ……」
私は思わず呟き、時計を見た。
天気の良い、風の気持ち良い昼下がりだった。
今日は祐樹も剛も帰りが早いから、その時間に合わせてパイを焼いていた。
芳ばしい薫りがキッチンに立ち込める。