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愛しては、ならない
第10章 カーネーション
「……レモンパイ、剛さんが好きなのよね……」
私は、彼が無心にパイを頬張る姿を想像して頬が緩む。
――この家で生活する前に、剛の食べ物の好みをリサーチせねばと思い、訊ねた事があるが、彼は真剣にメモを取る私を見て苦笑した。
「食べれる物ならなんでも大丈夫ですよ」
意気込んでいた私は、ガクッと応接のソファからずり落ちそうになる。
「い、いや……
でもこれだけは食べられない!とか、これさえあればご飯三杯行けちゃう!
とかあるよね?
私はねえ、パンも大好きなんだけど、やっぱり白米がだーいすきなの!
白い炊きたてのご飯なら、おかずが無くてもどんどんいけちゃう!
……でもねぇ、祐樹を妊娠してた時には悪阻が酷くて、大好きなご飯が炊ける匂いがダメだったの……
あの時は悲しかったわあ……」
ベラベラ喋る私を、彼が静かな眼差しで見て笑ってるのに気付き、私は恥ずかしくなり黙ったが、彼はクスリと笑い、言った。
「どうぞ、もっと話して下さい……
僕は、菊野さんの話を聞くのが好きですから」
「そっそそそそそうっ!? よ、良かったわあっ! 」
私は、彼の口から
"好き"という単語が出てきて舞い上がり、どもる。