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愛しては、ならない
第11章 蒼い覚醒
――剛が家に来てから三年が経とうとしていた。
雪がちらつく曇天の三月のある日、私はキッチンでスポンジケーキに生クリームをデコレーションしながら、心ここに在らずだった。
ヘラで綺麗に塗ろうとしても上手く行かず、首を振り一旦作業を中断して椅子に座り深呼吸する。
今日は、剛の高校受験の合格発表なのだ。
剛は、学校の授業と簡単な復習だけで充分に学習に付いて行っていたが、週に一度の真歩の家庭教師も真面目にやっていた。
中学で、他の生徒達と普通に仲良く出来るのか等心配をしたが、そつなく勉強も行事もこなし、寧ろどちらかと言うと剛は人気者らしかった。
剛が風邪で学校を休んだ時は必ずクラスの生徒が何人か訪ねてきてお見舞いだと言い手紙を置いていったりしたものだ。
そしてやはり、彼は女子にモテた。
大人びた剛は、他の子供達とは違う雰囲気を常に醸し出していたし、ピアノを流麗に奏でる姿に一目惚れする女の子達も多かった。
休日に女の子達が剛に会いに来る事も時々あったが、彼は面倒がり、祐樹に居留守を頼んだりしたのだが――
祐樹を見た女の子達は皆一様に
「剛君って、弟にそっくりなんだね~!
美形兄弟って素敵――!」
と騒いだ。