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愛しては、ならない
第12章 その花は、手折(たお)られて
「だってまだ小学生だろ。十時間は寝なくちゃならないんじゃないか?」
「も~!
それは寝すぎ!」
背中をポカポカ叩きじゃれてくる祐樹と軽口を言いながら、剛は菊野の事を気にして彼女が居る寝室の方向にチラリと視線を向けた。
結局、菊野はあれから部屋に籠ったまま出て来ない。
花野が急須で緑茶を淹れ、二人に差し出して溜め息を吐いた。
「大丈夫かしらねえ……あの子。たまに貧血で寝込む事があったけど……
それにしても、剛さんの御祝いの日なのに、菊野は寝込むし悟志さんは急に仕事のトラブルで帰れなくなったり……
剛さん、何だか悪かったわね~」
「そんな事ありません……花野さん達が来てくれて嬉しいですよ」
剛がそう言うと、花野は満更でも無い笑みを浮かべて肩を竦めた。
「まあ、でも私達が来る時で良かったわ。
……剛さん、何か困った事があったらいつでもおばーちゃんに言うのよ?」
「え~僕には?」
祐樹は、花野の座るソファの背にぶら下がり拗ねた様に言う。
「ふふふ……祐樹はいつもおばーちゃんに何でも話してくれるでしょ?」
「えへへ~」
二人はコロコロ笑い合う。