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愛しては、ならない
第12章 その花は、手折(たお)られて
「やれやれ、息子の御祝いの日が仕事で潰れるなんてあんまりだな……まあ、下手したら徹夜の処を何とか帰ってこれて良かったよ」
悟志は上着を脱ぎハンガーに掛け、ネクタイを外す。
「……お疲れ様、悟志さん」
私は、彼の仕草に父の面影を見ていた。
父と雰囲気が似ている悟志だが、仕事から帰宅し、上着を脱ぐ仕草や疲れた表情の在り方まで似ている。
私は幼い頃、父の疲れを子供心に癒してあげたいと思い、小さな拳で肩を叩いてあげた物だ。
剛は、そんな当たり前の様にある親子の触れ合いを知らずに大人になろうとしている。
私は、人は何歳からでも変われる物だと思っているし、そう信じたい。
けれど、いくら私が心を砕いて剛に家族の情という物を感じて欲しいと願った処で彼の子供時代をやり直せる訳でもないし、幼少期でしか感じ取れない愛情のセンサーがあるとしたら、剛のそれはもう失われていると言っても良いのだ。
第一、私が剛を一人の男性として見詰めてしまっているのに――