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愛しては、ならない
第12章 その花は、手折(たお)られて
ほの暗い部屋は、ベッドサイドの淡い照明だけが点いていて、ベッドの上を蠢く人影は時折その形をくっきりと顕す。
荒い呼吸と、烈しく軋むスプリングの音を凌ぐ、あの女(ひと)の甘く蕩ける声が、剛の鼓膜を冒して行く。
言葉にならない、喘ぎ。
「……ふっ……あんっ……もっ……と……
――――っ!」
剛は、腹の下に存在する自分の男性自身が先程から硬く、身体中の血が其処に集まっているかの様にたぎって居るのに気付いていた。
彼女の姿ははっきりと見えないのに、その吐息や声だけで、身体が烈しく反応してしまっている。
――剛さん、おはよう……
朝、リビングで起き抜けの自分を迎え、珈琲を淹れながら微笑む菊野、包丁で指を切って涙目になり悔しがる菊野、ピアノを弾いていると、家事をしながら、いつの間にかうっとりと聞き入ってしまい、手を滑らせて皿を割ってしまい、舌を出す菊野――
今まで見ていた彼女の姿からは、想像もつかない妖艶さに、剛はゴクリと喉を鳴らす。
その音で、菊野がこちらに気付いてしまわないか、と思ったが、夫に責め立てられ快感の最中(さなか)の彼女には全く耳に届いていないらしい。