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愛しては、ならない
第13章 甘い、地獄の日々
悟志は、昨夜寝室の前に落ちていた小箱を剛に差し出した。
剛は、瞳を僅かに揺らし箱を見詰める。
悟志は、静かに言った。
「……落ちていたが、君から菊野に渡す物だろう?」
剛は、瞬間息を呑んだ。
菊野に渡すつもりで部屋の前まで行き、そして二人の交わる様子を一部始終まで見てしまった自分。
箱を部屋の前に落とすという、決定的な失敗をしていたのか――
悟志は、疑っているのだろうか?
二人の情交を盗み見ていた事を、知っているのだろうか。
(――そして、俺の気持ちを……?)
剛は表面上は冷静さを装いながら、活発に考えを巡らせた。
(――慌ててはいけない。素知らぬ風で受け取るしかない…… )
剛は微かに笑顔を作り、悟志から箱を受け取る。
「すいません……見当たらなくて探してました」
「そうか……それは良かった」
剛と悟志の探りあう様な視線がぶつかり、静かな火花が散った。