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愛しては、ならない
第13章 甘い、地獄の日々
「――私、に……?」
二人の会話を聞き、私は顔を上げ剛を見た。
剛が一瞬優しく笑い、胸が疼き、それ以上見ていられなくてまた私は顔を臥せる。
「――菊野」
悟志の声に、また震えてしまう。
振り返らない私に溜め息を吐くと
「今夜は遅くなる……
夕食は要らないよ。
先に休んでいなさい……
じゃあ、行ってくるよ」
と言い、玄関へ歩いて行ってしまった。
程なくしてドアが閉まる音がして、悟志が仕事へ出掛けたのだ、と私は悟り、一気に身体の力が抜けた。
剛は菊野の身体の柔らかさや、肌の滑らかさ、甘い香りに気が遠くなる寸前だったが、彼女を離すのが忍びなくて、抱き締めたままで居る。
――今離したら、もう触れる事は叶わないだろう。
そうなら、もう少しこのままで……
そう思い菊野を抱いていたが、突然腕の中ですっとん狂に叫ばれて、剛は思わず離してしまった。
「あああ―――っ!」
菊野は、剛が離した途端に叫びながらキッチンに走って行ってしまった。