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愛しては、ならない
第15章 檻の中の愛②




「――?」


清崎の肩を抱き、ドアを閉めようとした俺は、ふと菊野に呼ばれた様な気がして手を止めた。


胸の中に凭れかかった彼女が、潤んだ目で見上げる。


「どうしたの……?
早く、部屋へ行こ……?」



その時、聞き覚えのある悲鳴のような高い声が耳に入り、咄嗟に外へ出てみると、菊野が座り込み、その前に真歩が屈んでいるのが見えた。



「……菊野……さん?」


「剛君?」


清崎の手を振りほどき、俺は菊野の方へ向かい走った。



離れた距離からでも、菊野が泣いているのが分かった。
何も考えていなかった。
とにかく、放って置けなかった。



真歩が狼狽した様に何か喚いていた。


それ程遠くないのに、菊野までの距離が遠く感じてもどかしい。



菊野は下を向き、肩を震わせている。



――貴女は何故、こんな所にいる?


何故そんな風に泣いているんだ?



疑問と、彼女へのいとおしさが込み上げる。



つい先程までは清崎への欲望で支配されていた筈なのに、菊野の姿を見て、もう菊野の事しか考えられなくなっている。



――ああ、俺は、やはり貴女が好きだ。


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