この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛しては、ならない
第19章 恋の業火
そして林檎の実を擦り、持っていき、彼に食べるように促すが、剛は甘える様な眼差しを私に向ける。
「……食べさせてくれたら、食べます」
「……っ」
私はまた頬に熱を持ち、自分が熱を出したのかと錯覚をしてしまう。
この期に及んで迫る彼を怒ってやろうかと思ったが、ぼうっと焦点の合わない目をした彼を見て、私は
"この子は、病人だもの……
優しくしてあげなくちゃ"
と思い直し、スプーンで林檎を掬い、彼の口元へ持っていく。
彼は、素直に口を開けて、林檎を飲み込むと、小さく呟いた。
「……冷たくて、美味しい……です」
微かな笑顔に胸がキュンと鳴り、私はゆっくりと彼の口にスプーンを運んだ。
無心に林檎を飲み込む彼は、まるでほんの小さな子供のように見えた。