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愛しては、ならない
第19章 恋の業火
剛は、虚ろな視線をさ迷わせ、過去の記憶をたどりながら掠れた声で話す。
「……身体が熱くて、身体の全部が痛くて苦しくて……
そんな時でも、あの人達は俺を置いて何日も留守をしました……」
「剛さん……」
私は、彼の手を思わず握ると、僅かな力で握り返された。
「そんな時、良く夢を見ました……
頭が馬で、身体が人間の形をした生き物が……
俺を手招きするんです……
そこはお前の居る場所じゃない……
こっちへ来れば、苦しい事は何も無くなるよ……て……言うんで……」
剛は、そこまで話すと胸を抑え咳き込み、私は彼の背中を擦る。
「剛さん……
もう、喋らないで……
眠った方がいいわ……」
咳き込む彼は、首を振り、尚も続けた。
「でも……
馬の顔をした人間なんか怪しいから、嫌だ、て俺は逃げるんです……
逃げて逃げて……
そうしていると目が覚めて……」
私は、幼い剛が一人家に取り残される映像を思い浮かべ、胸が抉られる痛みを感じた。
彼にかける言葉が見付からず、ただ側で手を握るしかなかった。