この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛しては、ならない
第22章 滅ぼせない恋情
「あ――っ!
ストッキング伝線しちゃった……
替えなくちゃ――っ」
四月。
剛の高校入学の朝、髪を結い、セレモニースーツを着た私はドレッサーの前で叫び、クローゼットの中を引っ掻き回す。
「きゃ――っ!
これも、これもなんか穴開きとか、伝線してるし!
無事なストッキングがない――!
どうしよ……あっ!
コンビニで買ってこうかな」
「騒がしいわねえ……
どうしたの?」
花野がドアを開け、呆れた風に言った。
「あ――
お母さ~ん!
ストッキングが……」
花野は、苦笑して溜め息を吐くと、エプロンのポケットから新品を出した。
「流石お母さん!
何でも用意してるのね~!」
「貴女はストッキングを穿くの、下手だからねえ……
こんな事もあろうかと持ってきておいて良かったわ」
花野はコロコロと笑う。
私は、母が家に居てくれる事に大きな安心を覚えていた。
悟志が倒れて病院に運ばれてから二週間が経つ。
大量に血を吐いた悟志だったが、奇跡的に命に別状は無かった。
色んな検査をしたが原因が不明で、医師も首を傾げた。
私は毎日病院へ通い、時には家族棟へ泊まる事もあった。
家の事を花野が手伝いに来てくれたり、泊まってくれるので、私は大いに助かっている。
ただ、悟志の意識は戻らないままだった。