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愛しては、ならない
第22章 滅ぼせない恋情
健康にいつも気を遣い、酒は付き合い程度しか飲まず、スポーツで身体を鍛えている彼は、会社の健康診断でも引っ掛かった事も無かったのだ。
倒れたあの夜、裸で血を浴びたままの私の代わりに、剛が付き添い救急車へ乗り込み病院へ行ったのだが、私は寝室で呆然として動けないままで居た。
スマホが鳴った様な気がしたが、私は、目に映る物や聴こえる音、手に触れる総てが現実か夢か区別がつかない状態にあり、ただただ血で染まった絨毯の上に座り込んでいた。
掌を見ると、紅い色が飛び込んでくる。
――この色は、何の色なの?
禍々しい、鮮やかな紅。
その紅は、流産の記憶と痛みを呼び覚まし、悟志との思い出と共に私の中へと急速に流れ込んで来た。