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愛しては、ならない
第22章 滅ぼせない恋情
――ハッキリ断らないと、彼も可哀想でしょ?
真歩の言葉が過るが、見上げる程に大きくて、見るからに強そうで、どんな硬い物でも噛み砕いてしまえそうな丈夫そうな白い歯を覗かせて豪快に笑う彼を、可哀想などとは思えなかった。
私だって、ハッキリと言える物なら、言いたい。
でも、もし彼が逆上したら?
怖くてとても出来ない――
いつもフォローしてくれて、私の代わりに彼の相手をしてくれる真歩は居ない。
私は咄嗟に、嘘を付いた。
「ごめんなさいっ!
た、体調が悪くて!
だから――急いで帰りたいのっ!
さ、さようなら――!」
棒読みな上に、声を元気に張り上げてしまい、彼はツボに嵌まったらしく、急ぎ足で歩く私の後を笑いながら付いて来た。
「菊野ちゃん……
本当面白いなあ……
ねえ、今度さ、休みの日に二人で何処か行こうよ」
「用事があって無理ですッ!」
「じゃあ、次の休みは?」
「無理です」
「その次は?」
「無理です」
駅前の賑わう通りをズンズン進んで居たが、いきなり後ろから手を掴まれ、壁に押し付けられた。
「きゃ……」
恐怖で小さな声しか出ない。