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愛しては、ならない
第24章 滅ぼせない恋情③
彼を初めて見掛けたあの日から、心を奪われていた。
鍵盤の上を踊る指先、指先を追うその涼やかな眼差、しなやかな腕、時折拍子を刻み揺れるその爪先に。
貴方の総てを、欲しいと想ったあの瞬間から――
剛の薄い黒目の中に囚われ閉じ込められたかの様な、心地よく甘い錯覚の中、私は溢れそうな胸の内を、止めて置くのが限界に達していた。
水が溢れる様に、想いが、言葉が零れてしまう……
(言ったらダメ……)
必死に葛藤している私の手を彼が取り、絵本の中の王子様が姫にする様に、甲にキスをした。
「貴女が俺を、連れ出してくれたんです……
俺は、貴女の物です――
だから……」
彼の瞳に煌めく涙を見て、私は突き動かされる様に、口を開いた。
「剛さ……わ……私は」
(ダメ!何を言おうとしてるの?)
剛は、私を真っ直ぐに見詰める。
「私は……貴方を」
(ダメ――――!)