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愛しては、ならない
第24章 滅ぼせない恋情③
上品な造りの有名ホテルの玄関口が見えて、私は目を見張る。
制服姿の守衛がタクシーを誘導し、停車すると剛はポケットからお札を出して運転手に渡した。
お釣りを受け取り、私の手を引き車から降ろす。
流れるようなその物馴れた仕草に、また見惚れたが、疑問が口を衝いて出てしまう。
「……剛さん、な、何故こんな所に?」
「花野さんに言われてました。
きょうは、ここで二人でゆっくり食事してきなさい、って。
無理にでも連れていかないと、引け目を感じて菊野さんは行かないだろうって…」
「……お母さんが?」
私は、母の気遣いに目頭が熱くなると同時に、複雑な気持ちが込み上げてきた。
此処は、この場所は、私と悟志が式を挙げたホテルなのだ。