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愛しては、ならない
第25章 離したくない
菊野は、ベッドの上で身体を縮め、俺から逃げるかのように両腕で自分を抱き締め顔を逸らした。
ときめいて、高揚しているのは、やはり俺だけなのだろうか?
家で二人きりなのとは違う。世の中から隔絶されたホテルの一室に、俺と菊野は朝まで二人きり。
今日は、最初から家に帰るつもりはなかった。
今夜こそ、俺の事をどう思っているのか問い詰める。
彼女が本気で俺を拒むなら、きっぱりと諦める。
いや、もし拒まれても、今度こそ抱き締めてしまうかもしれない。
俺は、恋に目覚めたばかりの獣だ。
心も身体も制御出来る自信などない。
ーー傷付けたくない。
ーー欲のまま、壊れるまで抱き締めたい。
相反する二つの想いに翻弄され、俺は唇を強く噛み、拳を握り締めると自分の頬を殴った。
鉄の味が口の中に広がり、弾みでよろめくが、柔らかい物が俺の身体を受け止めた。
「剛さん……何するの!何て事を……っ」
菊野が、顔を歪めてハンカチで俺の口元を優しく拭う。