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愛しては、ならない
第25章 離したくない
しんとした部屋に、二人の呼吸だけが響く。

菊野の小さな息遣いと、微かに上下する胸元ーー彼女も俺と同じ様に、胸を高鳴らせているからからだろうか?

白のスーツが彼女の綺麗に染まった肌をより美しく見せ、俺を誘っている。

華奢な足首にそっと触れると、弾かれたように彼女の全身が震えた。



「脱がしますよ……」


「っ……!」

菊野の目は、また涙が零れそうに盛り上がる。


「靴を脱がすだけです……そんなに怖がらないで下さい」

「こ……怖くなんかっ……」


壊れ物を扱う様に、俺は彼女の足首に触れて細い靴を脱がし、彼女の目から顔を逸らして部屋の収納に靴をしまう。


振り返ると、菊野は泣きそうな顔で俺を見ていて、視線がぶつかり合った。


二人の間に、熱い火花が散った気がして、俺はゆっくりベッドに腰掛ける彼女に歩み寄る。


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