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愛しては、ならない
第25章 離したくない


だが俺は、そ知らぬ振りをして彼女に笑いかけた。

――苦しい、て?
なんの事を言っているんだ?

彼女は、俯いて真っ赤になったまま絶句していた。

素直な反応が可愛くて、いじらしかった。


菊野が高校生だったら、こんな風にはにかみながら話すのだろうか。


そう考えた途端、理不尽な嫉妬が胸の奥から噴き出してきた。


菊野は、今までどんな恋をしてきたのだろうか?


悟志と出会う前にも、男の心を奪い、そして菊野も身も心も奪われて来たのだろうか?


俺はその時初めて、彼女との年齢差を忌々しく思った。


俺は、やはり子供だ。


恋の経験も、その手練手管も何も知らない。


どうしたら、好きな貴女を振り向かせられるか等、何もわからない子供だ――
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