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愛しては、ならない
第29章 虚しい演技を止める時
現に俺は、昨夜抱いたばかりだというのに、もう菊野を欲しがっている。
俺が愛だと思っているそれは、只の肉欲の塊なのではないか?
「……っ」
急にこめかみに激痛が走り、思わず掌で顔を覆った。
両親の記憶が甦ると、決まって気分が悪くなる。
そして、自分を取り巻く全ての事象が否定的な色合いを帯びて見えてくるのだ。
「おい……大丈夫か?」
心配そうに覗き込む森本の顔が目の前にあり、俺は我にかえる。
少なくとも、今の彼の目の中には純粋な人の良さが顕れていた。