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愛しては、ならない
第29章 虚しい演技を止める時
俺は、軽く深呼吸をし、彼の肩を叩いた。
「悪い。
寝惚けたみたいだ」
「いつまで寝ぼけてるんだよ~?可愛い彼女の清崎の夢でも見て眠れなかったか?」
森本は俺の背中を小突くが、ふと真顔になった。
「昨夜は、菊野さんとお泊まりか?」
「――」
彼の何気ない一言で、俺の脳裏に菊野の艶かしい肌や、甘い声が蘇り、身体が熱くなるのを止める事が出来ない。
黙った俺をじっと見て、彼はニヤリと笑った。
「行ってらっしゃいのハグを俺も菊野さんにしてもらいたいなあ~」
「……っ」
悪戯っぽく舌を出しスキップするように先へ小走りする森本の後ろ姿を、俺は睨むように見た。