この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛しては、ならない
第29章 虚しい演技を止める時
菊野と別れ際にした、ホテルの前での口付け――
もしや、見られていた――?
一瞬、背中にヒヤリと冷たい感覚が走ったが、俺はまた口の端を上げ、平然とする風を装った。
「羨ましいか?
お前に菊野さんはやらないからな」
わざと大仰な口調で返すと、森本は髪を靡かせながらこちらを振り返った。
「菊野さんによろしく言っといてくれよ。
剛の相手に飽きたら俺とデートして下さいってな」
「ばーか。
お前なんかに菊野さんを近付けられるか。
軽薄なのがうつる」
「あっはっは!!
剛は美形なのにキツイよな――!!」
森本は、コロコロ笑い転げながら軽い足取りで走っていった。