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愛しては、ならない
第29章 虚しい演技を止める時
女子の三人組が、明らかに俺達の方を見て何やら耳打ちをして、笑ったり眉をひそめたりしている。
男子二人を追い越すと、その者逹は俺を見て目を見張り、無言で笑いを噛み殺しているように見えた。
他にも、不可解な反応を示す生徒たちに出会ったが、清崎は気付いていない様子だったので、俺は素知らぬ振りで談笑しながら教室を目指す。
何だかよくわからないが、少なくともあまり感じの良い物ではない、と言うのは分かる。
やはり、昨日の入学式でのあの振る舞いが目立ってしまったのかも知れない。
――「噂になってるぜ?
菊野さんはお姉さんなのか、恋人なのか、てな」
森本の言葉が蘇り、俺は笑いそうになってしまった。
(そうさ……菊野は俺の恋する人だ……
彼女を思うだけで身も心も踊り、かと思えばどん底の地獄に落とされたような絶望を味わったり……
こんな想いを、皆知っているか?恋した者にしかわからない想いを……
面白おかしく噂する連中には、どうせ、わからない感情だろうな……
好きに言わせて置けばいい……
放って置けばじきに収まるだろう)