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愛しては、ならない
第30章 彼しか見えない
喉の奥に苦い何かが込み上げて、嗚咽しそうになったが堪えた。
私は、何を悲しくて泣くのだろうか。
剛が将来幸せになってくれるのを願う――とか言っておいて、自分の欲のまま、彼に求められるままに身体も心も開いて快楽に溺れて……
自分の好きなようにしたくせに、何を泣く資格がある?
私は、恋の地獄に自ら堕ちた。
剛を道連れにして――
なのに今涙を流すのは、今の状況に酔っているだけではないの?
傍目から見れば、ただ愚かしいだけの私……
けれど、例えそうだとしても、狂おしい程に彼を恋しい気持ちをどうしても止められなかった。
――リーンリーンリーン
「……ひいっ!!」
突如、テーブルの上にあったスマホが黒電話の着信音で大音量で鳴り、飛び上がる。
早鐘をうつ胸を宥めながら、私はスマホのアラームを切った。
毎日、病院に行く時間に合わせてアラームをセットしてあるのをすっかり忘れていた。