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愛しては、ならない
第30章 彼しか見えない
毎回毎回、初めて聞いたかのように驚いてしまう自分は本当に馬鹿だと思う。
悟志がここに居たなら、優しく笑って頭を撫でるだろう。
父親のように包み込む眼差しで。
でも彼は父親ではない。
私の夫で、私を心から愛してくれるひとなのだ。
なのに、こうしている今でも、私はもう剛に会いたくて堪らなくなっている。
昨夜のように、熱く見詰めて、囁いて、口付けて、そして烈しく愛して欲しい。
ひとりでに火照る頬を、水のペットボトルで鎮めようと当てながら、深く深呼吸した。
いつまでも、こうして物思いに耽っては居られない。
急いで家事をして、病院に行かなければならない。
振り切るように伸びをして、洗濯機のスイッチを入れた。