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愛しては、ならない
第30章 彼しか見えない

ドアを開けたと同時に飛び込んできた光景に、息が止まった。
数メートル先にある、真歩の姿。
パイプ椅子から気持ち前屈みになりベッドの方へ身を寄せて、左の手で悟志の頬に触れている。
肩までの艶やかな髪の隙間から僅かに見える真歩の横顔は、今まで私が見た中で一番綺麗だった。
真っ赤なルージュが良く似合うそのぷっくりとした唇は更に美しい微笑みの形になり、切れ長の理知的な印象の瞳を潤ませている。
唐突に手に力が入らなくなってしまい、持っていたガーベラの花の束を床に落としてしまう。
バサリ、と花を包む紙包みが乾いた音を立てた。
そして、ゆっくりと、真歩が顔をこちらに向けた。
私は花を拾いもせずに、馬鹿みたいに口を開け、親友の顔をただ見詰めた。

