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愛しては、ならない
第30章 彼しか見えない
私は、慌ててハンカチで彼の腕を縛った。
彼は唇を歪ませて笑い、後悔に嗚咽する私の頭を撫でて胸に引き寄せる。
「脅しじゃなくて……本当に……噛もうとしましたね」
「ごめんなさい……っ」
「俺が……以前貴女を抱こうと迫ったとき、止めないなら舌を噛む、と言いましたね」
「――っ」
「本当は……嫌なんですか?
だからこんな事を……」
「違う……違うの」
首を振り否定するが、彼の瞳は傷付いた光を帯びていた。
「俺が……菊野さんが初めて……だと、信じられないから、ですか?
だから嫌になったんですか」
「違う……そうじゃないの……!!」
私は彼にしがみついた。