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愛しては、ならない
第30章 彼しか見えない


彼の身体が震えているのに気づき、胸が痛んだ。



――ああ……彼は、拒絶されて傷付いた子供なのに、私がその傷を押し拡げてしまったらいけない……


彼の背中をそっと撫でて、胸板に口付けると、彼はピクリと震え、溜め息を漏らす。



「貴方を嫌なんて思うわけがないじゃない……

私……私、ずっとこうして居たいって思って……

でも……本当はこんな事いけないから……っ……

だから――貴方に愛されながら……終わり……たいって……っ」


彼を宥めるつもりが、私の方が取り乱していた。

いつの間にか剛に私が抱き締められている。



「馬鹿ですね、菊野さんは」


「うっ……そ……そう……よね……」


「ははは」



グサッと傷付き落ち込む私を彼は屈託なく笑った。
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