この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛しては、ならない
第31章 企み
男は、菊野と俺を交互に見て、心底驚いたようだった。
それもそうだろう。菊野は童顔で人妻にも見えないし、高校生の息子がいるなど、とても信じられないだろう。
男はへどもどしながら「すいません、OLさんだと思ったから」とか何とか口走り、諦めて去っていった。
菊野は男の後ろ姿を見て溜め息を吐き、持っていた紙袋の中身を俺に見せて無邪気に笑った。
「ああ~良かった、剛さんが来てくれて……
私、ああいうの上手くかわせなくて……
それよりね、病院の中にある売店のベーカリーで美味しいクロワッサン買ってきたの……
早い時間に行かないと売り切れるの~!!今日は買えてラッキーだったわ」
「――息子、だって?」
彼女の言葉に被せる様に、俺は低い声を出していた。