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愛しては、ならない
第31章 企み
俺の頬を打ったその手を片方の手で握り、清崎が絞り出すように呟いた。
「……酷い……っ」
予想通りの非難の言葉が胸に突き刺さる。
そうだ、俺は酷い。
実の親に虐待され、時に放置され、ごく当たり前の子供時代を知らないまま施設にいた俺の心を、大きく深い優しさで少しずつ開き、温かい家に迎えてくれた菊野を女として愛し、欲のままに獣の如く抱いているのだ。
その一方で、清崎にも抗いがたい魅力を感じている。
これが最低でなくてなんだと言うのか。
俺を嫌って離れてくれるなら、その方が彼女にとっては幸いだ。
さあ、俺を罵って、嫌って、立ち去ってくれ――
彼女の顔を見ないままそう願ったが、不意に背中に柔らかい感触が当たり、フローラルの香りが漂って、俺は混乱する。
清崎の柔らかい腕が、背後から俺の身体を抱き締めていた。