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愛しては、ならない
第32章 企み②
「だから笑うな――!」
「祐樹……っ」
脚を彼に向かって振り上げる祐樹を、私は懸命に後ろから止めた。
森本は、妖しい流し目をこちらに向けながら、ゆったりとした動作で乱れた制服を直す。
――ママは、パパと息子のものだって?
今の貴女は、剛に夢中じゃないか。
可笑しくって涙が出そうだね。
森本は、胸の中でそう呟きながら二人に背を向けて、腰掛けて靴を履く。
祐樹は、彼を射ぬくような目で睨み付け、憎々しげに言う。
「ママ、塩を持っておいでよ」
「祐樹!」
森本は、また笑った。
「ははは。こんなに頼もしい息子が二人もいて、菊野さんは幸せですね」
――このクソガキが。
菊野が居なければ滅茶滅茶に殴ってやるのに。
心の中で毒づきながら、彼はいつもの柔らかい笑みを浮かべ振り向くが、突然神妙な表情になり、頭を地に擦り付ける様に土下座した。
「――申し訳ありませんでした!
ほんの出来心です!!
菊野さんの事がずっと好きだったんです……
どうか……許して下さい……!」
「はああっ?
テメエ、ごめんなさいで済むと思うのかよ――!」
祐樹は目を剥いて怒鳴った。