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愛しては、ならない
第32章 企み②


「……美女に挟まれる経験、なかなか無いわよ~!

この感覚、覚えておきなさい!」


真歩はわざとキツく腕に力を入れる。

祐樹は口を尖らせて抗議した。



「ちょっと――!!

センセ、本当にセクハラ……っ!!

剛もだけど、ママも友達選んだ方がいいよ――!!」


「祐樹――!言うわね――」



二人の言い合いが可笑しくて、私はフッと笑いを溢した。

真歩も祐樹も私を見て、嬉しそうに笑い、私達は抱き合ったままでコロコロ笑った。




「――皆、玄関でくっついて何をしてるんだよ」




不意に、涼やかな低い声が背後で聞こえ、私の全身がゾクリと震えた。

誰なのか、直ぐ分かる。

私を作る身体の細胞総てが貴方に惹かれているから。

振り向かなくても貴方だと分かる。

全部で、貴方に恋している。

これは、私の初恋で、そして最後の恋になるだろう。



「剛君~ヤッホー!真歩センセが泊まり掛けで特訓に来たわよ~!」


「よく言いますね。遊びに来ただけでしょう」


「ふふふ~ん。バレた?」


「剛。丁度良かった~!理科の宿題手伝ってよ~」


「おい……帰るなりおねだりかよ……しょうがない奴だな……」


「へへへ~!」



真歩と祐樹と言葉を交わす彼の声を背中で聞きながら、私は密かに深呼吸してから、彼を振り返った。

大好きな瞳が、私を真っ直ぐに捉えた。



「――お帰りなさい……剛さん」



私は大きな決心を秘めて、愛しい彼を見詰め返した。



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