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愛しては、ならない
第33章 壊れるほどに
その日は、真歩が買ってきてくれた高級弁当を夕食に、皆賑やかに騒いだ。
真歩はどうやら交際していた男性と別れたらしく、しかも手切れ金を幾らか渡され、ショッピングで使いきって来たのだ。
結婚を約束していたが、男性の方が二股をかけていて相手が妊娠したらしく、別れる事になったらしい。
真歩は大量にチューハイやらスパークリングワインやら買い込んできて飲んだくれていた。
祐樹は、こうなる事が分かっているので、真歩から逃げるように夕食を済ましてからさっさと自分の部屋へ引っ込んでしまった。
剛はピアノに向かい、時折こちらを見て微笑する。
目が合ってしまい、つい胸を高鳴らせてしまうが、真歩が居る前で彼への思いを出してはいけない。
私は唇を結んだ。
「はあ~今度こそ、結婚報告出来ると思ったのにい~!!」
「私、その人の話は全く聞いて無いわよ?」
既に開けてしまった大量の缶を片しながら、私は真歩に熱い緑茶を差し出すが、彼女は頬を膨らませてイヤイヤの仕草をする。
「茶~はいいわよ~!
まだ飲むんだから――!」
「もういい加減にした方がいいんじゃない?
何本飲んだと思ってるのよ」
「ええ~!?まだ~いっほんしきゃ~のんれらいよ~」
彼女の頬や首筋は綺麗に紅色に染まり、目は焦点が合っていない。
こうしてうちに来て酔いつぶれてしまうのも珍しくは無いのだが、今夜の彼女は何処か痛々しく見えた。
「ほら、呂律が回ってない!」
「よっれないろ?」
真歩はニヤニヤ笑い、いきなり私に抱き付いて胸に顔を埋めた。