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愛しては、ならない
第33章 壊れるほどに
剛の唇が、何かを言いたげに僅かに開き、躊躇うように閉じて――という動きを何度か繰り返した。
私は、笑顔を向けて訊ねる。
「……なあに?剛さん」
「清崎と……」
その名前にチクリと心に痛みが走るが、引き続き冷静さを装う。
彼は、シャツを捲り包帯の巻かれた腕を見せた。
「ちゃんと、病院に行って診てもらいましたから……安心して下さい」
「そう……良かった。
痕が残らなければいいけど」
「残ってもいいんです」
腕から顔へ視線を戻すと、彼の瞳が赤く潤んでいた。
「この傷は……菊野さんとの恋の証です」
「――」