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愛しては、ならない
第34章 恋の短夜(みじかよ)
今夜の菊野は積極的だ。
部屋へ入るなり、俺のシャツのボタンに手を掛けてひとつひとつ外しながら頬に口付けてくる。
ぎこちない仕草で胸元を擽る彼女がいとおしくて、俺はその小さな手を掴み、キスを返す。
彼女の瞳が潤んで揺れていた。
俺も、同じように切なく彼女を見詰めているのだろう。
――好きだ。好きだ。
貴女を誰よりも。
何度想いを告げても足りやしない。
貴女は、俺を闇から引き上げて、日溜まりへと連れていってくれた人だ。
いや、貴女が優しい光その物だ。
施設で初めて貴女を見たあの時から、きっと俺は恋に堕ちていた。