この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛しては、ならない
第5章 戸惑いの始まり
その時店内に流れるピアノの音にデジャブを感じ顔を上げた。
華やかな、愛らしいこの旋律は……
そう、剛が弾いていたショパン。
楽しくて跳ねるような曲なのに、弾いている彼の瞳の中には沈んだ色が見えた。
優雅な仕草で鍵盤を奏でる彼を、遠くからでなくもっと近くで見たい、無性にそう思ってしまった――
でも、いざ目の前に彼が居ると緊張して……
「やだっ……」
ある言葉が頭に浮かび、思わず頬を押さえた。
「?」
真歩が怪訝な目で見る。
剛の事を思い出すだけで頬が熱くなり、動悸が激しくなる。
これはまるで、恋しているみたいじゃないか。
(ウソ……
だってあの子はまだ子供よ……?)