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愛しては、ならない
第37章 愛憎②
やっと咳が落ち着いた私は、彼の腕にしがみつくようにしていた事に気が付き慌てて離れようとするが、彼がきつく抱き締めてきて敵わない。
「や……はなし……あっ!」
彼が、鼻先を胸に埋めて消え入るような声で何か呟き、私はくすぐったさに仰け反った。
くすくすと彼が笑うので、その震動もこそばゆい。
「森本く……っ」
胸に埋まる彼の頭を退かそうと思わず髪を掴むが、その柔らかさに驚く。
掌をするり、とすり抜けて、甘い香りが鼻腔を擽った。
そして、彼が震えている事が分かり、私は絶句する。
「……さ……ん……」
先程までの超然とした態度とは全く違う、迷子になって心細さに泣く幼子のように見えて、私は無意識に彼を腕で包み込み、頭を撫でていた。