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愛しては、ならない
第38章 愛憎③
「ただいま……」
暗くなりかけた頃、玄関のドアを開けると、何かの煮込み料理だろうか。デミグラスの香りが漂ってくる。
菊野の靴と、祐樹の脱ぎ散らかした運動靴に、恐らく祐樹に放り出されたであろうランドセルが無造作に置いてある。
珍しい、と思った。
いつもなら、菊野が直ぐに叱って片付けさせるのだが。
俺は溜め息を吐いて靴を脱ぎ、ランドセルを手にリビングのドアを開けた。
「祐樹、帰ってきて放り出したままとか、お前は一年生か!」
「あ――剛、遅かったね――!!
わかった――あの彼女とデートしてきたな?ひゅーひゅー」
祐樹はソファに寝そべってゲームに興じていた。
手元の画面に集中しながら俺の方を見ずに生意気な口をきく。