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愛しては、ならない
第38章 愛憎③
「……っ……剛さ……」
菊野は腕の中で身体を強張らせ、やはり頬を染めていた。
今朝の冷めた距離を置くような態度に悶々としていた事が嘘のように、俺の胸は甘い思いで充たされていく。
彼女をこうして抱き締めれば――その目を見詰めれば――けばだっていた心は恋の喜びに震え始める。
菊野もそうなんだろう?
もう、俺に抱き締められないと、どうにかなりそうな程に俺を欲しいんだろう?
俺が菊野を欲しくて堪らないのと同じように。
抵抗もしない代わりに、抱き締め返しても来ない彼女は怒ったように唇を尖らせ、頬はどんどん鮮やかに染まっていく。
何の感情がそこに隠れているのか図りかねたが、俺にはそんな菊野が可愛くて仕方がない。
今日一日離れていた分を取り戻すかのように、更に彼女を強く抱いた。