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愛しては、ならない
第38章 愛憎③
「ぐは……っ」
苦いものを呑み込むように咳を堪えるが、代わりに出たのは獣の断末魔のような叫びだった。
「剛……っ?
どうしたんだよ、大丈夫かよ?」
祐樹の声が頭上で聞こえるが、返事をする余力もない俺は、両腕を床に突いたままで込み上げる吐き気に耐えた。
目に映る自分の手さえ、リアルさを失っていく。
俺が居るべき場所は、閉じ込められていたあの狭い空間ではなかったのか?
あのまま、命が尽きてしまった方が良かったのか?
――私、貴方が欲しいの!!
施設で初めて会った日に、菊野が俺にそう言った――
だから俺は、貴女の手を取って暗闇から抜け出したのだ。
だが、拒絶された。
――もう、私に触れないで……!
「……は……ははは……」
内臓が全て口から出てしまうのでは、と思える程の激痛の中、俺は低く笑っていた。