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愛しては、ならない
第39章 愛憎④
それからどれ程の時間が経過したのだろうか。
鈍い痛みを胸に感じ瞼を開けると、部屋は暗く、自分はベッドに横たわっていた。
頬に触れるとガーゼが貼ってあった。
ベッドサイドの灯りをつけて手鏡で自分の顔映し出すが、目の周囲は青黒くなり、頬は腫れ上がっている。
彼女が気に入っていた顔が台無しだ。
もう少しましな顔の状態にならないと、嫌われてしまう。
いや、彼女の事だから心配して悲しんで、身体の水分が無くなってしまう程泣くのだろう。
口の中に血の味がして、水でゆすごうとキッチンに向かうが、途中にある父の寝室から灯りが細く漏れていて、彼は足を止めた。
ギギ……と何かが軋む音に嫌な予感が込み上げる。
前にも、真夜中に父が雇った女性を責めているのを見てしまったのだ。
性懲りもなくまた手を出しているのか――げんなりしながら足を忍ばせて部屋の前を通り過ぎようとしたその瞬間(とき)聴こえてきた声に彼は全身を凍り付かせた。