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愛しては、ならない
第39章 愛憎④
彼女が息を呑む気配が感じられた。
彼は拒絶の意味を込め彼女から背を向け、滴る血を眺めながら、小さな嗚咽と共にドアが閉まる音を聴いた。
ズクン、ズクンと心臓が脈うつ度に、傷口が痛んだ。
だが、痛むのは傷よりも、裏切られた恋だった。
森本はそれ以来、本気で異性を思う事はなかった。
成長と共に彼は美しい少年になり、色目を使う家政婦も一人や二人ではなく、彼はゲームを楽しむように女性たちと身体を重ねた。
本気の恋など、愛などあるわけがない。
皆、自分の中の空っぽな部分を充たす為に誰かを利用しているだけだ。
それを埋めてくれるなら、誰だっていいんだ――
彼は、柔らかな笑みの美少年という見た目に反して、非常に褪めた心を持ち成長していった。