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愛しては、ならない
第39章 愛憎④
『汚らわしい――』
かつて、父に言われた言葉が甦り、森本の頭の中が真っ白になる。
そうだ、自分はとっくに汚れている。
小学生の時、本気で人を愛した。
だが、そう思っていたのは自分だけだった。
何の代償も見返りも求めない愛情など、永遠に続く関係など存在しないと悟ったあの時から、自分は汚れた。
大体が、あの父の血を受け継いでいるのだ。
生まれた時から汚らわしいんだ。
菊野も、過去のあの人と同じだと思っていた。
所詮、同じ女なのだと。
抱いてしまえば同じ、声をあげて淫らに腰を振り、快楽を得る為に利己的に振る舞い、嘘が上手になる――
女は、皆そうなのだと思っていた。
だが、菊野は本当に怯えていた。優しく、時に強引に迫れば、身体も心も許すだろうと思っていたのに、彼を全身で拒み、苦しそうに咳き込んだ。