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愛しては、ならない
第39章 愛憎④
怖がって苦しそうに咳き込み、小さく丸まる菊野に、それ以上の何かをする事など出来なかった。
自分よりも歳上で、大人な筈の彼女は、とてもか弱くて頼りなげで、少し力を込めて抱けば壊れてしまいそうだった。
そして、菊野を見ていたら、とうに記憶の奥底に閉じ込めてた筈の過去の想い出が甦り、気が付けば彼女を『お母さん』と呼んでいた。
彼女を、自分がどうにか出来るとでも思っていたのか?
身体だけでなく、心まで欲しいと思ってしまったのか?
我ながらなんて馬鹿な思いを抱いたものだ。
森本は思い出し笑いのように口元を歪めたが、清崎のヒステリックな声が耳障りで、彼を物思いから現実へと引き戻した。
「意気地無し……あんたなんか最低っ……」
「晴香――」
森本は、彼女の腕を掴み引き寄せ、組み敷くと烈しく口付けた。