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私の執事さま
第1章 はじまり


きっとこの気持ちを咲夜に伝える事は一生ない。

それは私が生まれた日から決まった事。

私と咲夜はお嬢様と執事の関係。

……伝えてしまえば、その関係さえ崩れてしまうに決まっている。





「おはようございます。お嬢様。よく眠れましたか?」

「…………」





ベッドの側に立ち、ニコリと微笑む咲夜に、ぼんやりと視線を移す。

毎朝私を起こしに来るのも、咲夜の仕事。

私は体を腰まで起こし、愛想の無い態度で挨拶する。




「おはよう。誰かのおかげで寝不足よ」

「朝からご機嫌ナナメのようですね」




咲夜はそんな私を見てクスッと笑い、急に腰を曲げると私の唇に自身の唇を押し付けた。




「っ……」




不意打ちのキスに目を閉じる暇もなく。

咲夜の顔が離れていくと、ようやく自分の体温が上昇し、鼓動が速まっている事に気づく。

そして腰を伸ばした咲夜が私を見て余裕そうに笑んでいるという事にも、




「……機嫌、なおりましたか? お嬢様」




悔しいが、胸を高鳴らせた。
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