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刑事とJK
第99章 根城の裏で笑う者~前編~
―――数分後、呼び出しておいた藪内がやって来た。
「他の仕事がたんまりなんだから、早く済ませてくれよ~?」
「すんません、でも、協力よろしくお願いします」
頭を下げるような真似は、斉藤は一切しない。
相手がたとえ先輩であろうと、この場の担当は自分なのだからという意識からだろう。
「…へぇへぇ」
藪内は頭をポリポリと掻くと、廊下に出た。
「まぁ…叫び声と一緒にこの新米君が駆けてきたわけで、ただ事じゃないなと思ったわけよ」
親指で指され、嘉山はコクコクと頷く。
「話を聞こうにも、"遠藤さんが、遠藤さんが"の連呼でな…
とりあえず、この部屋の様子を見に来た」
藪内は扉を閉めると、すぐにまた開けた。
「すると、足が見えたんだ」
藪内は遺体のあった場所を指差す。
「刑事の勘ってのもあってかな…
嫌な予感がしたから、新米君に応援を寄越すよう指示したよ」
「その時、嘉山はどの辺りにいたんだ?」
「僕は、ここで…藪内刑事の後ろにいました」
そう言って嘉山は、廊下に突っ立ったままでいる。
「新米君を行かせた後で、俺は遠藤さんに近づいて…」
藪内は遺体のあった傍まで寄り、しゃがんで手を伸ばす。
「首の脈を…確認した」
その時のことを事細かに思い出しているのか…
藪内の手は少し震えた。
もうすでに、遠藤の脈は無かったに違いない。
「…藪内さん、その時の遠藤さんは仰向けっしたか?」
「いいや、俯せていた。
地面にべったりとな…」
「…」
斉藤が嘉山の表情を窺うと、ポカンと口を開けていた。
驚いている。
なんせ、藪内と一緒にこの部屋へ戻ってきたときには、既に遺体は反転していたということになるのだから…