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刑事とJK
第99章 根城の裏で笑う者~前編~
「気になったことが、二つある」
斉藤は少し身を乗り出す。
「一つはおめぇが聞いた、"ごとん"っつぅ音。
二つは遺体が反転していたことだ」
また麺を一啜りすると、斉藤は箸を置いた。
「嘉山、その妙な音は、どんな音だった?」
「ですから、"ごとん"です」
「じゃなくて、何かが落ちる音かとか、何かがぶつかる音かとかだよ」
「そ…そうですね…
何かが打つような音…に聞こえました」
落ち着いたように振る舞っているが、嘉山の声は震えていた。
「…遠藤さんは撲殺されたらしいけど…その殴られた音って可能性は?」
「どうでしょうか、そこまでは…
ってか、もしそうだとしたら僕が遺体を発見したとき、部屋にはまだ犯人がいたってことになるじゃないですか!!」
「ああ、そうだな」
「ちょっ…斉藤刑事~」
―――嘉山の言う通り、遺体発見時に犯人が部屋に息を潜めていた可能性がないわけではない。
むしろ物音がしたくらいだから、死亡した遠藤以外の人間がいたという線はきわめて濃いだろう。
「その時に犯人捕まえときゃあ大手柄だったのによぉ」
「む、無茶言わないでくださいよ!!
僕はまだそこまで頭が回りません!!」
「…けど、犯人がその周辺にいたのは間違いないだろうな」
「え?」
「とぼけた顔すんな。
じゃなきゃあ誰が遺体を俯せにしたんだよ?」
「あ…そっか…」
遺体に触れられる時間は、嘉山が藪内を呼んで一緒に戻って来るまでの間だ。
その短時間に事を為すには、近い場所に犯人がいたと考えるしか他ない。
「あとは…俯せにさせた理由だな」
斉藤は箸を持つと、一気に焼きそばを平らげた。
積んであったパックは、もう全てからっぽだ。
「嘉山」
「は、はい!!」
「捨てとけ」
斉藤はゴミに視線を移した。
「は…はい…」