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刑事とJK
第99章 根城の裏で笑う者~前編~
「そ…そう言われてみれば、確かに…」
あの出血量だ。
殴った瞬間に一滴も血が飛び散らないとは考えづらい。
「じゃあ、この大量の血の下に隠れてしまってるとか」
「それも…考えづれぇ」
遺体の頭部は、壁につくかつかないかギリギリの位置にある。
その壁ギリギリの場所で殴られたのなら、確かに大量の血の下に隠れてしまったという説も無くはない。
「けどな、嘉山…
おめぇがもし殴られたら、どう倒れる?」
「どうって…
そりゃ膝から前に崩れ落ちるんじゃないですか?」
「ああそうだ。
んじゃその殴られた瞬間の血は、どの辺りに飛び散ると思う?」
「殴り方にもよりますけど…とりあえず足元周辺でしょう」
嘉山が答えると、斉藤は地面に視線を移した。
「遠藤さんの場合も本来、足元に飛び散っているはずだった」
「で、でも…それがない」
斉藤はクスリと笑った。
「こりゃちょっと面倒な事件だな」
「…」
面倒だと思っているようには見えない。
どこかワクワクとした何かが、その目に映っていた。
「斉藤刑事は…」
「あ?」
斉藤が振り向くと、嘉山は俯いていた。
しかしその澱んだ瞳は、しっかり斉藤をとらえる。
「斉藤刑事は…逃げたりしないんですか?」
「…」
「怖くないんですか…?
逃げたく…ならないんですか?」
「とうの昔に…逃げてやったよ」
「え?」