この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
呟きたい
第8章 おかえりなさい

 「おかえりやす」
 「ちょっと違くない?」
 「大体合ってればいいの」
 旅館で鏡子がご機嫌に迎える。
 着替えとタオルを抱えていた。
 温泉があるらしい。
 まあ、無ければ変だが。
 類沢はそれらを受け取って、奥に歩いた。
 あの後、長く散歩したせいもあり足が痛かった。
 石畳は慣れない。
 下駄の痕もついている。
 暖簾をくぐり、簀の子が張り巡らされた脱衣所に入る。
 先客がいるのか、水音が聞こえる。
 温泉ね。
 初めてだ。
 浴場なら経験あるが、自然に沸く湯は初の体験だ。
 ガラリと引き戸を開くと、湯の中に髪がプカプカと浮かんでいた。
 藻のように。
 不審に思い、入らずにいると、突然髪が形をとった。
 「あっ」
 沈んでいた人物が顔を出し、声を上げる。
 髪の下には人がいたようだ。
 「類沢先生じゃないですか」
 額に手を当てる。
 「……なんで雅樹がいる訳?」
 バザリと湯から半身乗り出す。
 縁に腕をかけ、雅樹はにこにこ微笑んだ。
 「本当はゲストとして呼ばれる予定だったんですけどね。何故かいつの間にかここにいたんですよ」
 「他は?」
 「ああ。見たことない人がいましたよ、そこに」
 指が示す方向。
 水風呂の冷水を頭から被り、深く息を吐く。
 類沢は引き戸を閉めながら、この状況に早く順応しようと決心した。
 「波賀先生じゃないですか」
 「え? おお、これはこれは」
 波賀は白い歯を見せて笑った。
 「類沢先生もここの常連でしたか」
 「まさか」
 その天然ぶりに力が抜ける。
 しかし……
 類沢はシャワーを浴びながら、雅樹を振り向いた。
 窓の前に座り、景色を眺めている。
 波賀はジャグジーを楽しんでいた。
 なぜ、この二人なんだろうか。
 まるで接点がないのに。

 リンスを洗い流し、類沢は湯船に浸かった。
 少し熱すぎないか。
 上半身を湯から出して、慎重に脚を伸ばす。
 パシャリ。
 波賀も湯に身を沈めた。
 「良い湯ですよね~」
 「……そうですね」
 「二人は仲良いんですか」
 「まぁ、職員室では話しますね」
 「類沢先生は生徒受けがいいから、学びたくてですね」
 「はい?」
 初耳だ。
 雅樹が楽しそうに頷く。
 「波賀先生も格好いいですよ?」
 「そうかな。ありがとう」
 奇妙にも相性が合っている。
 面白い。
/240ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ