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ここで待ってるから。
第25章 そうだ、温泉に行こう。〈花海棠と鳳仙花〉
〈花海棠の間~本館露天風呂:女子二人~?〉



 夏と総一朗君は食事の後、二人で本館にある大浴場に行き私と沙矢子は部屋で酒を飲みながら、ピーナッツをつまんでいる。

「…てか、この前深山さんと飲みに行って何もなかったの?」

「はい?何もって?」

「いや、だから。元カレに誘われなかったの?だって、お互い嫌いで別れた訳じゃないでしょう?」

「ま、まぁそうだけど。向こうも、専務のお嬢さんとお見合いしてお付き合い始めてるみたいだし。そう言う感情はなかったわよ?」

 ビールを飲みながら、ふっと思う。もし、あのまま涼介と別れなかったらどうだったんだろう。

 後悔とは違う。

 もし。その先の物語はわからないけど、その選択は後悔していない

「まさか、深山さんよりいとこ君を選ぶとは思わなかったから。」

「どうして?」

「…私も総一朗君は年下だけど、橙子は六歳年下なんだよ?結構、離れてるでしょう?」

「だからって、話が合わないとかないし。」

「そんな普通な話を聞きたい訳じゃないんだけど。」

 沙矢子をちらっと見ると、ニヤニヤしている。

「は?何を聞きたいわけ?」

「…セックスの話。」

 思わず手に持っていた、缶ビールを落とす。大して入っていなかったから、大惨事は免れた。

 沙矢子は一つ、大きな溜め息をつく。

「…総一朗君が休みの時とか時間が合えば、私が仕事終わって疲れていてもお構いなしにエッチをしたがるんだけど…。向こうは、若いから仕方ないのかな。」

 あー、確かに帰って来てから良く発情はしてるわね。でも、私も何気にそれに答えてるからなぁ。

「まぁ、若いし…ね。」

 でも、私達だってギリギリ二十代じゃない。まだまだ…。

「いとこ君もそんな感じ?」

「う?うーん。そう、かなー。そうだねー。」

 話をそらしたくて、なんとなーく新しく缶ビールを開ける。

 夏が私を求めるのは、私を必要だと思ってくれてるからだよね。

 それが、自分の性欲の捌け口だったとしても。

 夏が言う、「大好きだよ。」その言葉の裏に何かあったとしても。

 そうやって、疑って迷い出すのは何度目だろうか。

 自分で選んだ選択肢に、悩んでしまう。

 ボーッと、していると沙矢子の携帯が鳴る。

「あ、ごめんね。ちょっと、出るね。」

 沙矢子は画面を見て、携帯を開く。
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